それは 消える字
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著者 川田絢音(かわた あやね)
発行 2007年4月25日
定価  
本体2000円+税
ISBN

ISBN978-4-434-10400-8 C0092

判型 A5(148×210ミリ)60頁 並製
[収録詩篇]
灰をまねて  侵略  蕪になれない  心も  音は 葡萄の房のように  銅板画  松林  そんなことをしても無駄  上海の雑貨屋の店先で  気韻  凶器になって  カサブランカ  泥の男  意で虎を打つ  道は 茫茫と流れだす  旅の食事  聖家族  コロンビアの人形遣い  春  登雲路(ダンユンルー)  骨の運河  家も蒲団も捨て  麗江(リージャン)  自己  雨宿り

【HP新刊紹介】より
 「川田絢音さんの新詩集『それは 消える字』が刊行されました。
 これは「詩の雑誌midnight press」に連載された詩篇を中心に編まれたものです。1969年の『空の時間』以来、独自の道を歩んできた詩人・川田絢音のことばは、いよいよ深みを増して、読む者をして、「詩とはなにか」、あらためて考えさせる力を秘めています。ここには「詩」がある。ただそれを知るばかりです。



カサブランカ


カサブランカ

というファックス屋で

いま送ったのが詩というと

店のモロッコ人の眼がおののいて光った

詩の影を見て

人の思いが圧縮される

夏の列車で国を脱出してきたばかりの人に

詩を書いていると告げた時

こわばった頬がゆるみ

重い口で

詩はアルバニア語でもpoeziaと教えられた

詩と言うだけで

激情のように

なにかを破る

読まれていないのに

詩が

伝わることがあって

手に入れることのできない現実のものを

獲たような思いがした