『壜の中の炎』
(びんのなかのほのお)
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著者 中村剛彦(なかむら たけひこ)
装丁

 

古屋友章   

 

発行 2003年6月24日
定価  
本体2000円+税
ISBN 4-434-03308-5 C0092 \2000E
判型 A5判 /144頁 上製糸かがり
[収録詩篇]
・壜の中の炎 覚醒 生とは 愛 視線 言葉 ・刻印 遠のく空 鎖 失っても 抱擁 足跡 声 影 ・ 近くにある 二度とおとずれぬもの(ジェームズ・テイト) 夢を追って(ジェームズ・テイト)霧の中の羊 (シルヴィア・プラス)チューリップ(シルヴィア・プラス)月夜 聖夢 朝 ・ 眠る石 十二歳 悪戯書き ソース中毒 子守歌 本性 妬み 水面鏡 秘密 座る おじいちゃんの夢     あとがき

【栞文章】より
この詩集は丁寧に読まれるだけの価値をもっていると思う。言葉が刺激としてのみとおりすぎてゆく、そんな時代にあって、中村の言葉は聞く耳をもった人に静かにしみこんでゆく。これはまれなことであって、読者は一人の詩人の誕生に立ち会うことになるだろう。
                         
(井上輝夫 )



壜の中の炎 中村剛彦

窓に飾った古いガラス壜の中に、小さな月が灯った

小さくても部屋のかしこに、光は届いた

それはあなたと出会った夜のこと

 

それまで壜の中では、野心の青い炎が一つ

ゆらゆらと揺れ、ときに罪の色を帯び

ひときわ大きくうねっていたものだが

 

あの夜からずっと、小さな月は壜の中に灯っている

今宵は、この孤独な月を吹き消して

あなたに捧げる赤い炎を灯そう

 

やがて赤い炎は青い炎と一つになり

おのずと小さな太陽となり輝きはじめる

そしてもう、あなたのもとに、光は届いている