『対詩集 鏡に映る影』
(たいししゅう かがみにうつるかげ)
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著者 佐々木浩(ささきひろし)+舞出晋一(まいでしんいち)
装丁 土田省三(Little Elephant Co)
発行 2003年6月18日
定価  
本体1500円+税
ISBN 4-434-03304-2 C0092 \1500E
判型 A5変型判 /124頁 並製糸かがり

[収録詩篇]
最期の言葉 (S) 名前(M)キス(S)頬(M)感情(S)朗読(M)世の中の縮図(S)ゴミ箱(M)夢の島(S)未使用(M)糞喰らえ(S)宣言(M)フェア(S)同時(M)雨(S)傘(M)百年後(s)クローン(M)デジャ・ヴ(S)方程式(M)先生(S)チョーク(M)明後日(S)アパートメント(M)こけのむすまで(S)ラジオ(M)ジャム(S)宝石(M)……(S)カーテン(M)パープル(S)翻訳(M)

自在なる対詩の成果
「僕」たちの生きるいまが、柔らかな言葉の交換によって世界に開かれていく──。2002年2月から12月までeメールで往復された若い言葉の記録。



最期の言葉 佐々木浩

地球が滅びかけて
未知なる世界へ向けて
人類が最期に叫ぶべき言葉は
LOVE これ以上はないだろう

僕が死にかけて
僕が最期に語るべき言葉は
僕が愛した美しい詩の言葉などではなく
ある女性の名前だ これ以外はありえないだろう

 

名前 舞出晋一

僕が初めて下の名前で
君を呼んだ時

ちゃんをつけろよ

とは言ってくれず
口をふさがれた事を思い出す

それから歳月と同じくらい
互いに年を取れるようになった頃

久し振りに君を名前で呼んでみたら
もうキスはしてくれず

ちゃんをつけろよ

やっと口にしてくれた

欲しい言葉を手にいれた時は
もう、もう、
と、牛のように

欲しくて躍起になってた頃は
あい、あい、
と、猿のように

これらのたった二つ以外の
感情を生じさせる為に
今頃になって僕は
自分の名前を呼んでもらう事を
思いついた

よお、よお、よお、
と。