空の壜
(からのびん)
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著者 松元泰介(まつもと たいすけ)
装丁   
発行 年月日
定価  
本体1800円+税
ISBN 4-7952-2644-X
[収録詩篇]
[帯より]
松元泰介の青春はそのまま今日の少年問題と重なる。彼はナイフを閃かせる。その鋭い言葉の刃を! (正津 勉)


空の壜
松元泰介

空からなにが落ちてくるでもなく

おとこは空に大きな口をあけ

大道芸人のように腹のなか

はりがねを吊るしてロウソクをともした


見物人もなく

草の背丈で風にゆれ

草はらのなか

地虫だけが鳴いていた


(腹のなかで火はゆれて

(あれは狐火?

(うん、底なしの曇りガラスの色だ


おとこの口もとを雲がかすめてゆく夕方

暗くなると草はらに捨てられた洗濯機が

うなりはじめるように低い音域で、おとこは

耳を聾するばかり壜口を鳴らした